2025年7月26日、佐賀県伊万里市で発生したベトナム人技能実習生による強盗殺人事件。逮捕されたダム・ズイ・カン容疑者(24歳)は、伊万里市内の食品加工会社に勤務していました。ここでは、彼の勤務先や労働環境を起点に、技能実習生を取り巻く厳しい現実と「ジャパニーズドリーム」とのギャップを解説します。
ダム・ズイ・カン容疑者の勤務先と労働環境
容疑者が働いていたのは、鶏肉の解体や加工を手がける伊万里市内の食品加工会社。主に技能実習制度を通じて来日したベトナム人実習生が多く勤務しています。
- 勤務内容:鶏肉の解体作業、パッケージングなど肉体労働
- 雇用形態:技能実習生としての直接雇用(多くは監理団体を通じた契約)
- 賃金状況:時給約1000円前後で、残業もあるが近年は労働時間の規制強化で残業時間が減少
- 生活環境:工場近くの寮に集団生活。地域との接触は極めて限定的。
職場では「真面目だった」と評価される一方、給料は生活費と借金返済でほぼ消え、精神的にも追い詰められていた可能性が指摘されています。
海外から日本に出稼ぐぎに来日する実習生は年間で200万人でベトナム人の技能実習生は50万人にも上ります。日本の最低賃金以上が支払われているはずの実習生がどうして、わずか1万ちょっとの金額を強盗し殺人まで犯したのか。
佐賀県で日本人を殺したベトナム人の勤務先は、㈱JAフーズさが伊万里チキンフーズ工場だな。YouTubeのANNnewsCHの動画に建物がうつっていた。
— 田吾作s(。・_・。)s (@yametekere__) July 29, 2025
技能実習生が抱える「ジャパニーズドリーム」と現実
日本にくる技能実習生たちの約80%が渡航費や日本での生活費を母国に借金して来日しています。さらに人によっては仲介者(ブローカー)への支払いなどで多額の借金を抱えているのが実情です。
海外からすると日本=稼げるというイメージがあるようですが、実際は借金の返済に多くの支払いが生じるため、実習生たちはかなりの貧困に陥っています。そのため今回の事件は、単なる金品強奪ではなく生存そのものに関わる極限の状態で引き起こしてしまった事件だと言えるでしょう。
どんな理由があれ、人を殺めるということは絶対にしてはいけないこと。ましてや海外の実習生が起こした事件となれば、ますます外国人に対する目が厳しくなることでしょう。
夢の実現を目指して
多くのベトナム人技能実習生は、日本で働くことにより経済的な成功や家族支援を期待して来日します。いわゆる「ジャパニーズドリーム」です。
- 来日前に300万円前後の借金を負うことも多い
- 家族への送金が最大の目的であり、月収の大半を送金に充てる実習生が多数
現実の厳しさ
- 劣悪な労働環境:長時間労働、低賃金、重労働の繰り返し
- 社会的孤立:寮生活で地域社会から隔離、言語の壁もあり交流困難
- 精神的負担:返済すべき借金と家族の期待からくるプレッシャー
こうした状況は実習生の精神状態を悪化させ、事件の背景にも影を落としています。
ダム・ズイ・カン容疑者の背景と事件の動機
ダム容疑者は、「金銭目的」で犯行に及んだと供述しています。奪った現金はわずか1万1000円ほどで、家族への送金のために追い詰められていた様子です。
- 仕事の制約により十分な収入が得られず、生活が困窮
- 地域とのつながりも乏しく、相談相手もいなかった可能性
技能実習生が日本で働いてもらえる金額は業種によって異なりますが、最低賃金以上は手取りでもらえることになっているので大体月給20万円。そしてベトナムの物価は日本よりも低いため、日本円で20万円をもらえればベトナムでは高水準の生活ができることになります。
しかし、ダム・ズイ・カン容疑者は無遅刻・無欠席の真面目な勤務態度でありながら金銭的にはかなり困窮していた状態。
つまり、会社の給料未払い、もしくはかなりブラックでありながら残業代が出ないなどの状況など十分に考えられます。
このような背景が彼の心の闇を深めたと推察されます。
なぜこの事件は社会問題なのか?
この事件は単なる個人の犯罪に留まらず、以下の社会的課題を映し出しています。
- 技能実習制度の構造的な問題点
- 実習生の過酷な労働環境と精神的孤立
- 地域社会との断絶と交流の不足
これらが複合的に絡み合い、悲劇を招いたと考えられています。
事件から見える課題と今後の展望
- 労働環境の改善と適正賃金の確保
- 実習生の精神的ケアと相談窓口の充実
- 地域社会との交流促進と言語サポート強化
- 仲介業者の透明化と違法行為の取り締まり強化
まとめ
勤務先の食品加工会社は給料を満額支払っていたとされていますが、技能実習生の賃金支払いに関しては業界全体で未払い・遅延の問題も多く指摘されています。
今回の事件を機に、伊万里市の該当企業における労働環境や賃金支払いの実態について、関係機関による調査が進められている状況です。
ダム・ズイ・カン容疑者の勤務先という具体的な現場から見ると、彼が置かれていた過酷な労働環境と経済的な苦境が浮き彫りになります。
日本で夢を抱いた若者たちが直面する現実の厳しさは、この事件を通じて社会全体で考え直すべき重要なテーマです。
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